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2009年10月05日

嘘の公共性

気持ちよく装うこと

気持ちよく食べること

これは基本的な人間にとっての要素だと思う。

では、「弱い人を助けましょう」と語られるような形で関与する行為が普遍的なことであるか?

違うと感じるのです。

日本は、古くから政治的・社会的・文化的そして経済的にも二重構造を本質にする社会です。

日本の二重構造の原型をもっとも色濃く留めているもの

・・・日本の芸能から考えてみます。

正月になれば各地の民家の門づけ芸の太夫・才蔵

田楽・神楽などの能でいうワキとシテの一対

これは文化的優位者としての外来の神と

劣位者としての田舎の神の、圧服と和睦の交じり合った

「からみ」を原型としています。

さらには、年の始まりには、異界から福をもたらすとして、歓迎される門付け芸の人々は

一年を差別の中で暮らしていたのです。

日本の言語芸術は宴会の娯楽を起源としているものが多く見受けられます。

田舎の神社のお神楽の踊りをみると、興味深いことがわかります。

まず、宴会の主役は主だったお客さんです。その主だったお客さんは家の訪問客であるだけでなく

この地方への新米の客でもあります。

このお客への相方として地方の精霊が出てきて、主役のしぐさや話す言葉を

とぼけた仕方でまねをし、そのまね事のとぼけ加減を通して、田舎神は主役の言いつけに

抗い、また背いたりします。

そのうえで、結局は田舎神の降伏で終わります。

地方神は、しまいには黙ってしまい、地方神のしかめっ面で終わります。

この芸能の形が出来たのは、古代の列島に「中央政府がつくられた時代」ということです。

圧倒的な文化の波をうけるこのような場所では、この文化をよく吸収し、

それをより効率的に使いこなせる人間が力を持ち、

それに通じない人間は劣位に置かれてきました。

主神と地方神の対峙の特徴は、面と向かっての対立や反抗がないことです。

優劣二者が、対立しながらもそれが明示されない緊張した関係の原型が

中央から地方にやってきた官僚と地方(じかた)の人間関係という見立てです。

「べしみ」という面があります。口角に力をいれて両唇を強く結んだ異形面です。

オレは絶対にしゃべらないぞ!とおいう渋い感情といくぶんかの不満がこもった表情の面です。

田舎神の「べしみ」という姿勢が本質的にもつ

「一切新しい神の威力にとりあわない」という、いわば無力な抵抗。

古代の芸能のなかに見出せる、圧倒的な征服にたいする記憶は

敗戦時の前面屈服に似た経験ではないかと思うのです。

芸能が受け継がれることで、二重構造の社会を受け入れてきたとしたら、

ほとんどの地域でこのような芸能そのものが崩壊している中で、べしみは

どうなっているのでしょうか?

べしみがなぜ「沈黙」なのか

言葉を持たないのではありません。

劣位である「土着の文化」にも、地方の言葉があり、考え方があり、論理はあるのです。

地方の精霊は、すなわちスピリットは、これが口を開けば、直ちに神語に圧せられて、

たちまち服従を誓う詔を陳べなければならない。

これは、これまで自分のもっていた言葉を失う、奪われる経験だということになります。

古事記にアメノウズメノミコトが海の生き物を集めて、仕えまつるや(私に従うか)と

訪ねるのですが、全ての魚がはい「仕えまつらむ」と復唱する中で

ナマコだけが応えません。

ナマコに「この口はこたえない口だな」といってひもがたなを取り出して

あっという間にその口を割いたという記述があります。

神の言葉は奪う力でもあり、口を開かせる力でもあったのです。

この圧倒的な力に抵抗する最後のすべは、取り合わないということだったのです。

地域と関るアートプロジェクトのすべてとはいいませんが、

その多くはナマコの口をひもがたなで割いていることになっていないでしょうか。

アーレントの言葉に、公共空間とはテーブルのある世界とあります。

テーブルが現れ、人々を分離させつつ結合させる。

なぜテーブルを設えると、そこに人が集まってくるのか。

アーレントはその力を人々がそこに参加しようという「決意」だといいます。

この力の源泉は「公共性」というものでなく「私利私欲」なのだと思います。

それでいいのです。始まりはそいれぞれのもつ私の欲望だと思います。

動機づけでもいいでしょう。人間の本性を自分の「それ以上基礎づけられない」ヒトとしての起点へ復帰することではないかと

感じているのです。

本島という場所に開くテーブルはそういう意図を持っているものなのです。
























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Posted by ギャラリーアルテ at 16:20│Comments(0)art
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